社会的包摂を実現するには

7月は「社会を明るくする運動」強化月間・再犯防止啓発月間です。
それに先立ち、令和5年度「第73回社会を明るくする運動」福生地区推進委員会が開催されました。
(6月27日・もくせい会館にて)
この委員会は、市や教育委員会、市議会、社会福祉協議会、警察署、青少年育成地区委員、民生委員・児童委員、都立高校、小中学校、保護司会、更生保護女性会など24団体で構成されています。

委員会では、NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部(日本語支援のためのYSCグローバルスクールを運営している)の田中宝紀(たなか いき)さんによる「福生市における多文化共生について~社会的包摂を実現するために~」と題したご講演がありました。

海外にルーツを持つ人にとって「3つの壁」があるとのこと。

1つは「言葉の壁」
十分な支援を受ける機会がない場合、日本語が分からないことが、友達ができない、孤立へとつながる。また、勉強ができない、不登校や進学への影響があり、教育の機会を失ってしまう。自信がなくなり、意欲が低下してしまう。
母語の理解が十分でないことが、抽象的思考が困難になり、学習言語が伸び悩み、日本語も母語もどちらも中途半端なダブルリミテッドとなってしまう。保護者や家族・親族と意思疎通が図れない、保護者を尊敬できない、家庭の中で安心できない。居場所がなくなってしまう。

2つは「制度の壁」
義務教育への就学義務はないが、国際人権規約によって日本人と同一の教育を受ける機会が保障されている。しかし、2021年の国の調査では、不就学と就学状況不明の子どもは、全国で10,046人にもなっている。また、身分に基づく在留資格は、家族滞在での就労不可(資格外活動・週28時間までの制限)で、自立できるだけの収入を得られない。離婚による在留資格の失効。DVを受けた場合でも、在留資格の失効を恐れて逃げられない。
支援の手からこぼれ、社会から見えなくなってしまっている人がいる。

3つは「心の壁」
ある調査によると、日本社会全体に外国人が増えることに抵抗感があると答えた人は全体の35.6%だったとのこと。
職場での外国人社員とのかかわりの項目で、挨拶について「よくある」「時々ある」と答えた人は合わせて61.1%。40%近くの人は、挨拶さえも「あまりない」「まったくない」と答えている。
マイクロ・アグレッションの問題。
(無意識の行動や言動に現れる、人種やジェンダー、性的指向など歴史的グループに対する差別や偏見)

田中さんは、多文化共生の実現はとても難しいとおっしゃっていました。
ダイバーシティ教育の重要性やそのための民間の取り組みなども含めてお話しされました。
その実現のための過程として、Ally(アライ・味方、理解者、支援者、ともに行動を起こす人)「味方が必ずいる」と信じられる状況をつくっていくことが大切なのではないかという言葉で講演を締めくくりました。

今、小中学校で使う教科書展示が行われています。
その教科書を見ると、肌や髪の色、名前、車いす使用の子どもなど、多様性に富んだ子どもたちが登場している教科書が多くあります。

孤立を防ぎ、包摂的な社会の実現を目指すには、先ず固定観念から抜け出すことが必要だと感じました。
そして、まだまだ不十分な社会のしくみにも目を向けていきます。

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