まちづくりと市民参加 その2
市民自治研修2026「まちづくりへの市民参加 あらためて学ぶ都市計画のしくみ」の第2回に参加しました。(2回講座 主催:東京・生活者ネットワーク、まちづくりサポート・チェンズ)
○第2回 4月22日
都市計画の観点から、市民がまちの姿を描く可能性について、また、住宅費高騰という問題を踏まえた生活都市の展望について、東京都立大学教授の饗庭伸さんのお話を伺いました。

講師を囲んで、参加者と。
「東京の住宅問題」として4つの項目でお話を伺いました。
1 人口減少と住宅問題
先ず、人口が減ったら空き家が増えるのかを考えました。
ある都市に一斉に入居があり、外から引っ越してくる人がいないと仮定すると、人口(子の独立)、世帯(死去)、住宅(相続)の順で減少していきます。人口が減り始めてから住宅が減るまでには、約30年のタイムラグがあることがわかります。また、減少していくまでに、増と減が拮抗している期間もあります。空き家は、世帯と住宅の差分なので、一時的に増加することはあっても、やがては減っていきます。空き地となり再利用される、また、次の世代が入れ替わり住むことになりますので、人口が減ったとしても、まち中空き家だらけになることはありません。
次に、全国で空き家は増えているか、総務省の「空き家数及び空き家率の推移-全国(1978年~2023年)」の表をもとに考えました。
1993年から1998年まで5年間の空き家率は9.8%から11.5%で1.7%増となっていて、表が示す期間の中で増加幅の最も大きなところです。しかし、2018年から2023年の5年間では、13.6%から13.85%とわずか0.2%増で、空き家の割合が大きく増加していないことがわかります。
また、都道府県別に人口・世帯・住宅の傾向(増・拮抗・減)を見ると、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・沖縄県は、人口・世帯・住宅の傾向がそれぞれ継続して増となっていますが、秋田県・高知県は人口・世帯の傾向は継続して減となっていて住宅は拮抗・減開始となっています。都道府県によって変化の傾向に違いがあります。
世帯数に対して不足していた住宅が、1973年を境に住宅の数が世帯数を上回り、住宅余りとなります。数が充足し、量から質へと住宅に求められるものが変化していくなかで、住まいの課題も多様化していきます。2006年「住宅とセーフティネット」という考え方から、障がい者や高齢者、DV被害者など、課題解決のための住宅を地域につくっていくことが必要となりました。
2 市場とセーフティネット
2006年を境に住宅政策の枠組みが大きく変わり、政府の直接的な市場介入(公営住宅・公団住宅・住宅金融公庫)から、市場は民間、セーフティネットは政府でと変化しました。住宅政策が新自由主義化して20年が経過しましたが、成功したのかどうか検証する必要があります。
世帯構成や暮らし方など、多様な暮らしが可能な地域になっているかという視点で市場を見ること、また、セーフティネットを見る視点として、量的に十分か、問題があったときに介入できるかなど、2つの視点で地域を見ることが大切です。
3 まちづくりに落とし込む
住宅とその周辺の空間や様々な地域資源等を活用し、地域の中に、社会問題の解決のための良質な組み合わせをつくっていくという地域社会のイメージを、自分の地域に当てはめて考えます。URや公営住宅、居住支援協議会をどのように活用していくか、オルタナティブな住宅の開発など市民ができることをどのように地域につくっていくのかなど、市場とセーフティネットをまちの中に落とし込んでいくことが、まちづくりの視点に必要です。
東京都は、市場に対して「アフォーダブル住宅」(※1)の供給の誘導を図り、まちづくりの観点も持ちながら、住まいの選択肢を充実させる取組を行っています。
4 4つの都市計画
かつては、建物の新築による都市の価値向上が当たり前で、建替え等による代謝が高い都市がよいとされていましたが、都市の成熟にあわせて代謝は低くなり、「1人口減少と住宅問題」で見たように、空き家率の高止まりは、その表れであると言えます。代謝の高いまち、代謝の低いまちを、それぞれどのように使いこなしていったらよいのか、4つの都市計画で考えます。
○都市計画A:開発権・利用権付与等の市場価値重視の新自由主義的な都心エリアなどは、代謝が高くさらに代謝を上げたい都市。
○都市計画B:例えば、下町など木造住宅密集地に対し、防災の観点から公共事業を導入するなどリスク重視した高リスクエリアなどは、代謝が低く、代謝を上げたい都市。
○都市計画C:非市場価値重視の逆ジェントリフィケーション(※2)なインナーシティ(※3)などは、代謝が高く、代謝を下げたい都市。
○都市計画D:農地再生・自然再生など環境価値を重視した縮小エリアなどは、代謝が低く代謝を下げたい都市。
都市計画AとBについては、土地再生特別措置法等により、これまでに都市計画としてやってきたことですが、Aではセーフティネットをどのようにつくらせるか、Bではセーフティネットをどのようにつくっていくかが課題としてあげられます。
都市計画Dについては、東京都ではあまり考える必要がないエリアです。
都市計画Cについては、政策的なチャレンジが必要です。代謝が高いところに、アフォーダブルな住宅を誘導するなど、代謝を落ち着かせた低代謝のまちをつくり、多様な価値観のもとで課題解決して都市の価値を上げる一方で、その価値が「地価に反映されない」ようにすることが大切です。地価は低いけれど、幸福度の高いまちといった価値観を政策的につくっていくことが必要です。
住まい方は人それぞれですが、まちの中にどのような住宅を誘導し、セーフティネットをどのようにつくっていくかを、都市計画の観点から考えることが、高齢社会や住宅費高騰などの課題解決につながっていくことのではないかと思いました。
質疑応答では、「再開発事業に対し、議員としてどのようなことができるか」との問いに、「周辺住民への影響を言語化すること。再開発事業で困ることは何か、景観が悪くなるから困るのか、地価が上がるから困るのか。再開発事業により、景観価値は低くなるが防災価値は高まるなど、影響を言語化し、市民意見の集約をすること。」とお話をされました。
様々な自治体で再開発事業が行われていますが、民間施工であるため、まちの中心となる地域や多くの市民とかかわりのある場所、思い入れのある場所でも、市民意見の反映は難しいのが現状です。
福生市の再開発事業による市民への影響について言語化できるよう取り組んでいきたいと思います。
そして、様々な視点から、福生のまちをもう一度見直してみようと思います。
(※1)アフォーダブル住宅:一般的な家賃よりも手頃な価格で供給され、所得に応じて無理なく居住できる住まいのこと。
(※2)ジェントリフィケーション:都市の低所得地域が再開発や高級化により中・高所得者層が移り住み、地域の価値や居住環境が向上する現象のこと。
(※3)インナーシティ:都市の中心部に位置し、低所得者層が集まる社会経済的に困難な地域のこと。

会場となった都庁の中庭。 ネモフィラが見ごろでした。
