作業療法士(OT)からみた子どもの遊びと発達

東京・生活者ネットワーク 子ども部会学習会
「作業療法士からみた子どもの遊びと発達」にオンラインで参加しました。
(4月19日 東京・生活者ネットワークにて)

講師は、東京都立大学 健康福祉学部 作業療法士学科の伊藤裕子さん。

先ずは、作業療法の定義について
「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。」
基本理念は「人は作業を通して健康や幸福になる」ということ。

介護予防支援や発達支援、福祉用具支援、認知症支援など、支援を必要とする人がいる、あらゆる場所で行われます。

作業というと、仕事・労働としての作業を思い浮かべますが、それだけではなく、身の回りのこと、家事、遊びなど生活を構成するものを指します。

そして、この学習会のテーマは子どもの「遊び」について

子どもにとって「遊び」とは、
• 遊びは乳幼児期の活動の大半を占める作業
• 遊びの中で、感覚、運動、認知、コミュニケーション、社会性など、さまざまな能力が発達する
• 人の生存に関する基本的欲求「食べること・寝ること・排泄すること」と同様に欠かせない活動
• 脳の情報処理ネットワークの発達に大切な栄養となる、さまざまな感覚を受容し、処理し、運動として実行すること繰り返し、心身の発達を促す活動

遊ぶ(作業する)ことで運動機能、認知機能、心理機能、社会機能が発達し、発達することで遊びのレベルが上がり、その繰り返しで成長していきます。
子どもの「遊び」がその子の成長に大きく影響していることがわかります。

作業療法理論の一つに感覚統合理論というものがあるそう。

聴覚(聞く)・前庭覚(重力と動き)・固有受容覚(筋肉と関節)・触覚・視覚(見る)

遊ぶ(作業する)ことで、これらの感覚を得ながら段階を経て発達していくことを繰り返し、集中力・組織力・自尊心・自己制御・自信・学習能力・抽象的思考や論理的能力・身体と脳の特殊化を得ていきます。

例えば、
前庭感覚は、ブランコに乗ったり、ジャンプしたり、前後・左右・上下・回転などの動きによる経験から得られる感覚で、自分の体の位置や抗重力機能の発達などが促されます。
そういえば…最近は見なくなりましたが、公園のぐるぐる回る遊具は大人気でした。
固有受容感覚は、ボールを投げたりする動きなどによる経験から力加減などの運動の調整、体に加わる抵抗などを感知する感覚の発達が促されます。

遊びが成長の根っこにあって、その上に姿勢を保持する体感機能や「がんばろう」という興味・関心・動機、文字を書く手の調整などの関連する学習の要因へとつながっていきます。
「よく学び、よく遊べ」というのは、とても大切な言葉のように思います。

講師の伊藤さんは、小学校の特別支援教室を定期的に巡回しているそうで、その時の出来事なども交えながらお話ししてくださいました。
姿勢を保つことが難しい子どもに対する作業療法として、ブランコのような器具で体を揺らしながらその機能の発達を促したりするそう。
ハサミがうまく使えない子どもの様子から、紙の厚さを変えてみるようにアドバイスしたことで、上手に使えるようになったとか。
そういえば、ハサミを使うときには紙の厚さやハサミの大きさなどを無意識のうちに考えて、絶妙な力加減で紙を切っているのだな、とあらためて思いました。

人は、右手と左手で違う動きをしたり、柔らかいものを壊れないようにつかんだり、目掛けたところにボールを投げたり、それほど意識していなくても、とても複雑な動きをしています。
成長の過程で、遊び(作業)を繰り返しながら身につけています。
スキンシップやさまざまなモノに触れること、子どもへの声掛け、回ったり、ジャンプしたり、いろんな感覚を楽しみながら成長してほしいです。

遊びは子どもの「生きる力」のもとだから!

作業療法のための施設の例