福生市議会総務文教委員会視察・小中一貫教育の取り組みについて

福生市では、有識者や市内小中学校長、コミュニティ・スクール委員の代表者、幼稚園長・保育園長の代表者、PTA連合会会長などが集まった「令和における福生市立学校の在り方検討委員会」が設置され、今年度は小中一貫教育について議論されています。
一方、まちづくりのハード面においては、人口が減少していく将来を見据え、また、公共施設の老朽化に対応するために、公共施設の建て替えや総量を減らしていく計画が示されています。その計画の中には、学校についても示されています。

施設としての学校を見直す場合、子どもを中心とした学校の在り方と教育の在り方も同時進行で進めることが必要だと考えます。

今回の視察では、学校を出来るだけ地域に残していきたいと考える規模の小さなまち「小野市」と、義務教育学校3校を含む小中一貫教育を推進している規模の大きなまち「姫路市」の2自治体を視察させていただきました。

10月24日(月)兵庫県小野市

小野市は、兵庫県東播磨地域のはぼ中央に位置しています。
周辺の町村を合併や編入を繰り返し、現在は面積93.84平方キロメートル、人口約47,500人のまちです。
播州そろばんとは小野金物(家庭用刃物)の伝統的工芸品があり、市内には桜の名所も多くある自然豊かなまちです。

小野市立河合中学校を視察しました。

小野市では、脳科学に基づく教育を推進しています。脳科学者で東北大学教授の川島隆太氏が、平成17年10月に小野市教育行政顧問に就任。「脳の司令塔」である「前頭葉を鍛える」ことは、「「生きる力」を育み、心の教育につながると提唱され、2017年12月から「夢と希望を叶える脳科学Short Seminar」を配信。
3つの重点施策を展開しています。
Ⅰ、おの検定は、基礎学力を定着させ、豊かな心を育む学習システムで、小中学校統一の独自検定。(漢字・計算・英語・縄跳び)
教員が、自作のテキストをつくっています。がんばりカード等の工夫で、子どものやる気を引き出しています。
Ⅱ、小中一貫教育は、9年間のつながりを大切にしています。脳の発達時期(10歳の壁に着目)と学習内容の高度化に対応。小学校高学年の教科担任制。中学校区ごとに一貫した特色ある取組を行っています。
河合中学校区は、小学6年生が中学校校舎へ登校しています。(河合中学校視察)
市全体として、市長部局と連携し、マイナス1歳から15歳までを対象とする16か年教育を実施。脳科学の知見に基づく子育ての啓発。
Ⅲ、自主的な公開授業の実施で、教員の授業力の向上。授業改革や理数教育の充実で、小野市型学力向上に取り組む。また、学校と教育委員会の新しい関係を築くなど、教育環境整備を進めています。

 

生徒たちが考え決めたルールが、階段の踊り場に張り出されていました。

 

 

 

10月25日(火)兵庫県姫路市

姫路市は、兵庫県南部のほぼ中央に位置し、主要国道や広域幹線道路が整備され、JR山陽新幹線・山陽本線等と山陽電鉄などが乗り入れる交通の要衝であり、また、海上交通の中心的なまちでもあります。
面積は、534.35平方キロメートルで、人口約246,300人。
美しい世界遺産で国宝でもある姫路城をまちのシンボルとし、連携中核都市宣言を行い周辺自治体と連携、播磨圏域全体の経済成長をけん引しています。

姫路市には、小学校66校、中学校32校、義務教育学校3校があり、中学校区ごとにブロックに分けられています。
小中一貫教育導入の背景には、中学1年生で増加するいじめや不登校などの課題がありました。また、教職員の意識が、小中それぞれに、子どもの育ちや学びをつなげる視点が弱く、校種の中だけで考える風土がありました。さらに、子どもの成長はつながっているのに、教える側の意識はうまくつながっていないことも課題でした。
9年間の一貫した学びとするために、教職員の意識改革と指導力の向上を図り、校種間の接続を円滑にし、入学時の不安や心理的段差の軽減を図り、学力向上と人間関係の育成を目指しています。
義務教育学校3校は、施設一体型2校と施設分離型1校があります。課題解決に向けた成果がみられる一方で、公文書等が一本化できるものとできないものの見極めや、中学校籍の校長のみの配置となっていることから校長負担が大きくなっていること等が課題としてあげられています。

●今回の視察での感想

今回視察させていただいた2自治体は、全く違うタイプの小中一貫教育の取り組みを行っているので、それぞれの成果や課題等の違いを学ぶことができ、とても有意義な視察でした。

小野市では、脳科学に基づいた16か年教育を行っていることに注目しました。
子どもとの関わり等で立ち返るべき考え方が、市として一貫していることはとても分かりやすいと思いました。子育て関係の部署や幼稚園・保育園、学校等の関連機関と保護者が、同じ方向を向いていることは、子どもにとっても良い影響があるのではないかとおもいます。また、学力向上と心の教育は別のものと考えていましたが、脳科学に基づく見解では、前頭葉のはたらきである感情のコントロールは、読み・書き・計算・音読・コミュニケーションで鍛えることができるということです。
学習は、感情のコントロールに影響し、心の教育につながるとのことでした。さらに、川島教授の講演では、実際に脳の働きを映像にして映し出し、子どもたちと一緒に考える機会があるそうです。子どもたちが「なぜ、そうするのか。」を、視覚的にとらえ理解し、考えることが出来る機会になっていると思いました。学習やスマートフォンの使用等で自律の心を養う効果があることがよく分かりました。子どもの自律的な考えや行動を引き出すために、福生市でもこの考え方を取り入れていく必要があるのではないかと思いました。

姫路市では、義務教育学校のうち施設一体型に注目しました。
施設一体型の取り組みについては、施設の関係上、当初職員室を小中別々に設置していましたが、一つに設置することが出来てから、義務教育学校としてうまく回り始めたとのことでした。教育においては特に、教職員や子どもに関わる人材と、仕事を回していくシステムが大事だと考えますが、そのためには、目的に合ったハコモノを整備することも大事だと思いました。また、学校を統廃合することで地域に学校がなくなってしまうことへの、地域住民の不安やマイナスの意見があることもわかりました。姫路市の場合は、先ず1中学校区に1小学校となっている学区を義務教育学校としているため、大きな反対はなかったそうですが、義務教育学校とするための学校募集の要件に、地域の理解を得られているかという項目を設定したとのことでした。

今年度から福生市でも、令和における福生市立学校の在り方検討委員会が設置され、小中一貫教育について議論されています。小中一貫教育といっても、ただ単に義務教育9年間の学びを一貫して行うというだけでなく、児童・生徒を中心にして、保護者や教職員、地域住民の想いも併せてその学校に乗せていくことが大切であると思いました。さらに、就学前からの一貫した取組の必要性も強く感じました。
この視察で得たものを、今後に活かし、さらに学びを深めたいと思います。