性教育は人権教育 ~性教育講座を体験しました~
性教育の教材を扱うアーニ出版のアーニホールで行う性教育を、生活者ネットワーク議員と一緒に体験しました。(4月20日/世田谷区用賀)
アーニ出版は、学校での性教育の推進を目指し、性教育専門出版社として1996年にスタートしました。
ホールには、絵本や手作り人形などの教材が並べられています。
先ず、小学3年生になったつもりで、ワークショップ型の講座が行われました。
「プライベートゾーン」についての学びでは、人に見せない、触らせない、他人のを見ない、触らないのはどうして?と考えたり、
描かれたお父さん、お母さん、おにいちゃん、おねえちゃんに、髭や脇毛、性毛(陰毛という言葉は、マイナスイメージなので性毛(せいもう)という言葉を使っているとのこと。)を貼ったり、
おっぱいを貼ったり、
男女の体の特徴を考えながら、言葉だけではなく絵で学んでいきます。
それから、体の中にある精子と卵子のこと、挿入行為(性交)することで卵子と精子が出合うことなど妊娠の仕組みを学びます。
お母さんの体の中で赤ちゃんが大きくなり いよいよ生まれる時がくると、「お母さん人形」が登場し出産します。
産婦人科医と助産師とお父さんも協力します。
かわいい双子の赤ちゃんが生まれます。胎盤もちゃんと一人に一つずつついていて、助産師がへその緒を切ります。私は助産師役をやりましたが、ちょっとドキドキして、うれしい気持ちでした。
実際に講座を受けていた3年生は、「今度はおれが産ませたい!」という子もいて、交代で出産のお手伝いをしたそうです。
抱っこした新生児人形は、重さ約3キログラム。クタクタしていて頭を支えなければしっかり抱いていられないところは、本物の赤ちゃんのようでした。大事に扱わなければ壊れてしまいそうな感じを体感できます。きっと、子どもたちにもいい経験になったのではないかと思います。
次に、アーニ出版共同代表で性を語る会代表の北沢杏子さんから、2021年度の「性教育は人権教育」講座についてお話がありました。
北沢さんは、医大医学部看護学科と看護専門学校学生への講座を担当されていて、名刺には性教育実践者と記され、性教育に50年間携わってこられました。HIVウイルスの感染が拡大し、エイズパニックといわれた1990年ごろは性教育元年ともいわれ、公立中学校で講座を行うこともあったそうです。その講座は、DVD教材として活用されていて、視聴させていただきました。体や妊娠の仕組みと出産、人工妊娠中絶、性感染症やコンドームのつけ方についてなどが丁寧に説明されていました。また、中学生の質問に、淡々と科学的に答えているシーンが印象的でした。
最後には、講座を受けたまとめとして、自分の行動に責任を持つこと、望まない妊娠をしないなどが決意表明のように発表されました。
現在の学習指導要領では、「人の受精に到る過程(性交)は取り扱わないものとする」と規定されています。小学5年生の理科のある教科書をみると、メダカの誕生で受精の過程と受精卵を説明し、人の誕生で女性の体内でつくられた卵子と男性の体内でつくられた精子が結びつくことを授精というと説明しています。魚類で受精の過程を説明し人間の受精を理解するのは到底無理なことです。葛藤妊娠白書でも、「挿入行為をしていないが妊娠が心配」との相談があることを考えれば、性交についてもきちんと教えることが必要ではないでしょうか。(葛藤妊娠白書については、4月12日更新のホームページで報告しています)
子どもを取り巻くインターネット環境と危険な性情報についてを指摘する声は多くありますが、子どもたちが一番知りたい情報が、今の学校では教えられない現実があります。専門家から科学的に説明された性情報、性教育の重要さを改めて感じました。そして、自分も相手も大切にすること、愛情を表現すること、性欲をコントロールすること、いのちを大切にすること、健康を考えること、将来の展望、どう生きるか…様々なことが関係しあう包括的な性教育を実現していかなければ、児童虐待や子どもの貧困、性暴力、性差別、少子化などの問題も解決しないと思いました。
他にも、セクシュアルリプロダクティブヘルス/ライツ「性と生殖に関する健康と権利」についてやジェンダー平等、LGBTQについてなど、包括的な性教育を表す「性教育の樹」を示し、お話しいただきましたが、その一部しか伺うことができませんでしたので、また学ぶ機会をいただきたいと思いました。
子どもやパートナーと性について語ることは、とてもハードルが高いことのように思いますが、絵本で学ぶ性は、わかりやすくハードルを下げると思います。自分に合った絵本を探してみてはいかがでしょうか。