なぜデンマークの女性は輝いているの?
世界幸福度報告は、世界中の各国・地域の幸福度についての調査結果がまとめられたレポートで、例年3月20日の国際幸福デーに合わせて発表されています。
2025年のランキングは、世界147の国と地域が対象となっていますが、1位フィンランド、2位デンマーク、3位アイスランドとなっていて、日本は前年よりも4ランク下げて55位でした。
世界幸福度ランキング2位、福祉国家であるデンマークの女性は、仕事や生活の満足度が高いといわれます。女性個人として生きることや働くことと子育ての両立ができる社会はどのようにつくられたのでしょか。
「デンマークの女性はなぜ輝いているの?」と題した講演会に参加し、在デンマーク歴50年以上の小島ブンゴード孝子さんのお話を伺いました。
(11月25日・小金井市商工会館萌え木ホールにて)
デンマークは、1871年に全国女性連盟の設立、1915年に女性参政権の獲得と歴史をたどり、戦後の好景気から労働力不足となり、女性の社会進出が進んだことで公共の福祉の必要性が高まりました。
1982年には選択的夫婦別姓制度の導入、1983年には既婚女性の個別納税の制度が導入されました。
女性が一個人として尊重されているように思います。
国にとって最も大切な資源は「人」であるという考え方から、教育・福祉・医療が税金で賄われ、連帯精神でみんなが支えあえる社会「高福祉、高負担」の考え方が社会基盤となっています。
そして性別にかかわらず、人生を3つ分けて考え、
第1の人生:人間形成の成長期→学び、あそび、自分の芽を伸ばすとき
第2の人生:社会を支える生産期→働く、自己実現、仕事と家庭の両立
第3の人生:退職後の人生総まとめ期→老いても子に頼らず、同居せず、心の支えは家族でも介護はプロに。
自分らしい人生を、最後まで自己決定と自分らしさ、自立した人生を送ることが大切にされています。
第2の人生においては、学校を卒業してから(資格を取得してから)個々に就職先を探します。決まるまでは、国が収入をサポートしてくれます。また、希望するポジションが空いていなければ職に就くことも難しく、転職することがキャリアアップとなる場合も少なくないそう。
女性の就業率は、15歳から64歳までで78.4%。
(日本は、75.50%)
看護師や介護職、教員は女性が多いとのことですが、公的サービスの担い手として尊重されています。
国にとって最も大切な資源は「人」であるという考え方ですが、デンマークの「人のかたち」はどのように育まれているのかといえば、
幼児教育から「デモクラシー」を体感しながら育つということ。
市のアクティビティセンターは、住民の自主運営になっていて、民主的に運営されています。
そこで、地域でのデモクラシーを体感し、多数の意見に少数の意見をどのように反映させていくかという考えを実行しています。
「デンマークの女性はなぜ輝いているか」は、性別にかかわらず一人ひとりが自立し、個人として尊重される社会だからなのではないかと思いました。
ブンゴードさんのお話しの中で、ジェンダーギャップ指数についても触れられていました。
デンマークは14位。
16年連続して1位となっているのはアイスランド。
今年は、1975年10月24日の「女性の休日」から50年の記念の年で、映画も公開されています。
90%の女性が仕事や家事を休む形で参加した大規模ストライキにより「女性がいなければ社会が動かない」ことが可視化され、世界各地の女性運動に影響を与え、社会のあり方そのものを大きく転換する原動力になりました。
ジェンダーギャップの少ない上位の国では、クオータ制を導入している国が多いそうです。
しかし、デンマークの女性は、クオータ制の導入には反対したそうです。
制度があるからそのポジションにいるとみられたくないとのこと。
自己実現であることが大切にされるのだと思いました。
ジェンダーギャップ解消に向けて、まだまだ出来ることはたくさんあると思う、学びの多い講演会でした。
※小島ブンゴード孝子さん
1973年よりデンマーク在住。在デンマーク日本大使館、日本関連企業勤務を経て、1983年にユーロ・ジャパン・コミュニケーション社設立。(通訳・翻訳・企業コンサルティング等)日本での講演・セミナー活動、デンマークでの研修企画を実施。
現在は、デモクラシー・教育・子育て・男女参画等の日本へのメッセージの発信をライフワークとしている。
近著:「デンマークにみる普段着のデモクラシー」「デンマークの女性が輝いているわけ」など多数

