福生市議会建設環境委員会視察 多文化共生と国際交流の取り組みについて・スタートアップ支援・商店街チャレンジショップについて

所属する建設環境委員会の行政視察で、愛知県西尾市と静岡県焼津市に行ってきました。

●10月6日(月)愛知県西尾市

多文化共生と国際交流の取り組みについて

西尾市の外国人の割合は7.5%(2025年9月現在)と高く、その半数以上がベトナム人とブラジル人となっています。ベトナム人は短期で滞在する技能実習生が多く、ブラジル人は定住者が多くなっていて、市内人口に占める外国人市民の割合は、20代14.8%、30代12.2%と、生産活動を支える世代の割合が高くなっています。西尾市と周辺の地域は、自動車産業や機械産業が盛んなことから、そこで働く外国人が多く住んでいます。

2022年に「西尾市多文化共生推進プラン」を策定し、「多様性を豊かさに みんなで創る にしおの未来」を掲げ、5つのテーマに沿って、施策が推進されています。

1・誰もが活躍できる→多文化共生の活動をしたい人を増やし、協力できる方法をつくる。
2・子どもの学び・育ちを応援する→外国にルーツを持つ子どもが学校で勉強することを助ける。
初めて日本語を勉強する小中学校のこどもが日本語を覚えることを助ける。
先生が、外国にルーツを持つ子どもへの新しい勉強の方法を覚える。
3・災害や病気等から命を守る→災害のとき、みんなを助けることができる外国人を増やし、
協力できる方法をつくる。
4・取り残されず情報を得ることができる→外国人のための市役所窓口を充実する。
動画を使ったお知らせを増やす。外国人が日本語を覚えることを助ける。
5・誰もが多様性を認め合う→外国人の活躍をみんなに知ってもらう。多文化共生について知る
イベントや勉強会をする。多文化共生の活動をいろいろな社会の人たちにも協力してもらう。

今後の課題や強化していくべき取組は、災害時の支援体制の強化や地域でのキーパーソンの発掘と連携、日本人市民の理解促進とのことでした。

●10月7日(火)静岡県焼津市

フードコートでお話を伺いました。

スタートアップ支援・商店街チャレンジショップについて

焼津市では、まちの賑わい創出のための取組の一つでもある起業等する市民への支援のための取組を推進しています。
令和7年度焼津市スタートアップ企業拠点開設支援事業費補助金は、新たな事業分野の開拓や革新的な技術開発、また、新たな産業の創出により、市内産業の振興や産業基盤の強化と雇用機会の創出を図ることを目的に、市内で起業・創業を目指す人に補助対象経費の2分の1(上限250万円)を補助する事業で、9月30日現在で1件の申請があります。また、国が定める「創業支援等事業計画」に基づき、特定創業者支援等事業を行い、令和7年度は9月30日現在で8件の申請があります。他にも、焼津市スタートアップ創出強化事業として、新事業展開や新サービスの開発・新店舗オープン等の支援、相談対応を事業者に委託(委託費500万円/年)し応じています。

志太ビジネスハイスクールは、藤枝市・焼津市・島田市の3市で志太起業ネットワーク推進協議会を立ち上げ、将来を担う若者の力を、持続的なまちの賑わいに活かすため、高校生ならではの目線で地域課題を発見し、地域社会の一員として解決について考え、ビジネスにつながるプランを作成する取組です。参加した高校生が、実社会で求められる「自ら考え行動する力」を養うことを目的として、平成30年度から取組が進められています。学校ごとに3~5名程度のチームをつくり、5回の講座等を経てビジネスプランをつくり発表。日本政策金融公庫が主催する高校生ビジネスプラングランプリに応募されます。

商店街チャレンジショップは、商店街の空き店舗を活用し、試験的に営業してもらい、市内近隣への出店につなげるための起業支援です。家賃無償で、最長180日間活用することができます。(市の予算は家賃54,986円/月、商店街費5,325円/月)これまで18者が入店し活用されてきましたが、チャレンジショップの老朽化と近隣に入居可能な空き店舗がないことから令和7年度で事業が終了します。

焼津PORTERSは、焼津市と民間事業者、焼津漁業協同組合(漁具倉庫所有者)で連協定を結び「やいずワーク推進協議会」を発足。その拠点とし、テレワーク・コワーキング事業を通じて地域の発展と振興を図ることを目的に、市内の官民25事業者で取り組みがスタートしました。老朽化した漁具倉庫を、焼津らしさを体験できる滞在施設にリノベーション。市元の魚等を活用したレストランや地域の水産加工技術を活かした商品の物販店、ワーケーションなどの新たな需要に対応したコワーキングスペースや宿泊施設を整備し、地域住民と首都圏等からの人も呼び込むにぎわい交流の拠点として整備されました。(運営は、(株)スマートホテルソリューションズ)令和2年度から整備がスタート、段階を経て令和7年度にフルオープンの予定です。

●今回の視察での感想

西尾市では、多文化防災リーダーの育成や外国籍住民会議が開催されていています。外国人が地域住民の一人として、まちづくりに参加する意識を高めることができる取組であると思いました。また、地域活動に参加するための支援として、担当課にベトナム語とポルトガル語の翻訳支援ができる職員各1名が配置されていること、町会長の中にブラジル人がいることには驚かされました。地域コミュニティを大切にしていくのに国籍は関係ないと思いました。また、外国人市民は、高齢化を支える地域人材でもあると思いました。
福生市でも、大規模災害を想定し、外国人住民に対する防災に関する取組を強化していますが、支援体制の整備として、22言語に対応する「西尾市災害時多言語コールセンター」の設置は、とても有効であると感じました。(委託料20万円/年)福生市でも実現可能であると思いました。また、防災啓発として、外国人に合う食はどのようなものか考えるきっかけとしてもらうための「防災食クッキング講座」も実施されていました。食習慣や宗教上の理由等で日本の防災食が食べられない外国人がいることも想定されます。日ごろからの働きかけが大切だと思いました。
市からの情報発信として、「にしおしに すむ がいこくじんの ための せいかつじょうほう」が配布されています。イベント、福祉医療制度のお知らせ、今月の税金、今月の市民相談など、その時最低限必要な情報が、やさしい日本語で書かれています。情報のたくさん詰まった広報誌では、必要な情報を読み取ることは難しいと思われますが、情報を減らすことで必要な情報が届くこともあると思いました。
子どもたちの母語での意見発表の機会を持つなど、アイデンティティーを確立するための支援や取組、日本人との交流イベント、外国人社員の育成等のための企業との連携もあり、まち全体で共生社会を実現するための取組がなされていました。最近の外国人バッシングについては、「肌感覚ではあるが、感じるところがある。外国人に対して厳しいご意見が市民から届くこともある。」とのことでしたが、理解を広げることが、その解決につながると考えているとのことでした。

焼津市の創業支援等については、起業を考えている人を支援することと、まちの賑わいを持続可能なものにするためのものという2つの側面があると思いました。
特に注目したのは、焼津市スタートアップ創出強化事業で、起業・創業や新規事業等で困りごとがあったとき、信用できる相談先があることは当事者にとって心強いのではないかと思いました。また、相談のみであれば費用は掛からず、市が起業や新規事業を応援する取組として、とても有効であると思いました。
高校生を対象とした「志太ビジネスハイスクール」は、参加者にとって大きな学びとなると思いました。経済・金融の仕組みやマーケティングの専門家による講義、地域で活躍する若い起業家の講話やグループワークを通じて、高校生ならではの地域課題等を解決していくビジネスプランを考えていくこと、また、発表し共有することは、若い世代が地元地域で起業・創業を目指すことにつながることが考えられ、長い目でみた人材育成であると思いました。「失業者を減らし、人手不足を解消する」「今までにない自習室をつくる」「生ゴミで作る有機肥料」「子育てと仕事の両立を手助けする離乳食」「外国人向け物件アプリ」など、様々なテーマで取り組みがあったようでした。3年生は受験を控えているために、1・2年生が参加しているとのことでした。学校とのやり取りは難しい面もあるそうですが、今後も続けて欲しい取組であると思いました。また、福生市にも都立高校が2校あり、近隣自治体と連携して若者が地域で起業、活躍できるきっかけとなる取組の可能性を感じました。
焼津PORTERSは、漁具倉庫をリノベーションした施設で、フードコート、コワーキングスペース、テナント、宿泊施設があり、その真ん中にあるコミュニティスペースでつながり、地域住民や学生、子育て世代、市内事業者など、様々な人たちのたまり場的スペースとなっています。また、宿泊施設を利用する観光客や市外の事業者、ワーケーションでスペースを活用する人など、多様な人々の居場所や交流の場ともなっています。漁具倉庫の形を活かしたリノベーションは、古さと新しさの両方を感じることができ、落ち着いた空間となっていました。また、そこで働く人も生き生きとして、この場所と空間を楽しんでいる感じが伝わってきました。福生市にも、米軍ハウスや古民家などの資源がありますが、まだまだ活かせる道があるのではないかと思いました。

具体的な提案ができるよう、視察での学びを活かしていきたいと思います。

PORTERSの外観

2階のコワーキングスペース

建物の未改装部分

改装され、宿泊施設として使用されている。1階はバスルーム。

2階はベッドルーム。お掃除中でしたが見せていただきました。