令和6年第3回定例会 9月議会報告 その2

本定例会では、以下のような討論を行いました。

●福生市国民健康保険条例の一部を改正する条例
今年12月2日に健康保険証が廃止されることに伴い改正される条例です。保険証の利用延長・継続をした方がよいとの考えから、この条例改正に反対しました。
本会議において反対討論を行いましたが、賛成多数で可決されました。

議案第42号 福生市国民健康保険条例の一部を改正する条例について、反対討論いたします。
この条例改正は、令和6年12月2日に国民健康保険の被保険者証が廃止されることに伴い改正されるものです。
生活者ネットワークは、マイナンバーカードを健康保険証として利用することに伴い廃止される健康保険証の利用の存続、または延長をした方がよいと考えております。

2021年から使用可能となりましたが、マイナンバーカードを所有することは任意であり、したがってマイナ保険証を使用することも任意であるため、マイナ保険証を使用しない人には資格確認書が職権交付されることになっています。そのことについても、市民への理解は十分に広がっていないと思います。

マイナンバーカードの有効期限は10回目の誕生日、申請時に18歳未満だった人は5回目の誕生日となっています。マイナ保険証は、マイナンバーカードの電子証明書の機能を使っていますから、5回目の誕生日が有効期限となっています。カードの更新時期とは異なっています。期限が来たら、市役所の窓口で電子証明書の更新の手続きをすることになります。手続きを忘れると情報を開くことができなくなり、保険証を提示することができませんので注意が必要です。これまでの国民健康保険証は、2年ごとに送付されてきましたので、この点は大きく変更になるところですが、このことについても市民への理解は十分に広がっていないと思います。

高齢になるなど、何らかの理由で暗証番号の管理や更新手続きのための来庁が困難になったときは、資格確認書の送付を申請しなくてはなりませんが、このことについても市民への理解は広がっていないと思います。

そして、マイナ保険証と資格確認書というダブルスタンダード、両方持つこともでき、顔認証カードもあります。市民のみなさんに十分に理解が広がっているとは考えられません。

基本的には法令に従うべきであると考えますが、健康保険証については、国民皆保険のもと、だれ一人取り残されることなく、安心して医療が受けられる医療体制の保障という視点で利用実績等を検証したうえで廃止を検討すべきであり、拙速に健康保険証の廃止をすべきではないと考えます。

この条例改正は、健康保険証の廃止を前提としていることから改正に反対であることを申し上げ討論といたします。

 

●ガザ地区の即時停戦のための積極的外交を政府に要求する意見書提出を求める陳情書については、6月議会から継続審査となていたものです。
委員会の審査では、国会で決議が出されたこと、政府はすでに外交努力をしていること等を理由に、賛成少数で不採択。
本会議において賛成討論を行いましたが、賛成少数で不採択となりました。

陳情第6-2号 ガザ地区の即時停戦のための積極的外交を政府に要求する意見書提出を求める陳情書について、賛成討論いたします。
私は2020年、ドキュメンタリー映画「わたしは分断を許さない」のなかで、2017年に取材されたガザ地区の様子を見ました。当時の人口は約194万人、人口の約45%は14歳以下の子どもで、その8割近くは栄養失調に悩んでいるとのことでした。日常的に緊張状態にあり、常に食糧や物資が不足している中で、現在はさらに過酷な状況にあることは明らかで、陳情要旨にある通りです。
ガザ地区に入域するには、イスラエル国防軍の検問所、ファタハの検問所、ハマースの検問所と3か所あり、ジャーナリストでも厳しくチックされるとのことでした。ハマースの私服警官に尋問され、撮影した映像が記録されているSDカードを取り上げられるといった事態にもなりましたが、日本人ジャーナリストがガザの現実を世界に発信するために来たと説明し、日本人なら必ず現状を伝えてくれるはずだからと、しばらくしてそのSDカードは返却されました。

中東和平について、日本はイスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決を支持し、可能な限り早期に実現するための努力を呼び掛け、中東地域において信頼されているものと承知しておりますが、現状においては、さらなる日本政府の積極的外交が望まれるところです。

令和6年第213回国会において「ガザ地区における人道状況の改善と速やかな停戦の実現を求める決議」が可決され、政府に対して、人質の解放と停戦実現のための、環境整備に取り組むよう求め、ガザ地区の人道状況の改善、事態の早期沈静化のために格段の外交努力を払うべきであると決議されましたが、国会の決議に関係なく、福生市議会は福生市議会としての姿勢を明確にするべきであると考えます。

これまでの戦争や紛争などを見れば、軍需施設や空港、発電所などの主要施設が真っ先に攻撃されることは明らかです。本陳情を採択し、基地のまちから平和に向けた意思を示すことは重要であると考えます。

以上のことから本陳情に賛成であることを申し上げ討論といたします。

 

●民間建築物に係る石綿(アスベスト)等含有調査への助成制度を求める陳情書について、委員会の審査では、実施している自治体が少ないこと、実施していても申請がないこと、財源の確保が難しいこと等を理由に、賛成少数で不採択。
本会議において賛成討論を行いましたが、賛成少数で不採択となりました。

陳情第6-5号 民間建築物に係る石綿(アスベスト)等含有調査への助成制度を求める陳情書について、賛成討論いたします。
この陳情は、民間建築物の石綿含有建材調査への調査費助成制度の創設に向けた取り組みを求めるものです。災害などで、建物が倒壊した場合に備え、地域の安心、安全のために、地域住民や地元企業、行政が協力していこうと呼びかけています。

石綿については、1975年(昭和50年)の一部使用禁止から段階的に使用等が禁止され、クボタ・ショック後の2006年に労働安全衛生法が改正されたことで、石綿の原則禁止が決定しました。それまでの石綿の累積使用料量は約1000万トンと言われ、輸入された石綿の90%以上が建築資材に使われたとされています。
本陳情の要旨では、既存建築物の安全性の向上、使用や劣化状況を把握することで適切な維持管理を促進し、災害時の倒壊建物による石綿飛散から住民の安全を守る対策も求められるとしています。

環境省は、災害時における石綿の飛散及びばく露防止に係る措置について、阪神・淡路大震災の教訓をもとに、2007年(平成19年)8月に「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」を作成しています。その後、2017年(平成29年)9月には、東日本大震災や熊本地震を踏まえたマニュアルの改訂が行われ、令和5年4月に最新版となっています。
このマニュアルでは、災害時には、各段階において石綿が飛散するおそれがあるため、自治体は、住民等への注意喚起を行うとともに、適切な飛散・ばく露防止措置を講ずる必要があるとしています。そのために重要となる平常時における準備として「石綿使用建築物等を把握する」ことなどを求めています。今後、南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模地震が予想され、発生の可能性が高くなっているため、平常時からの災害に対する備えが重要になっていることを示しています。

本来、こうした調査は建物の所有者の責任で行うべきものではありますが、石綿の危険性が指摘されてから全面禁止までに時間がかかったこと、災害に備えて自治体としても石綿使用建築物等を把握しておく必要があることなどから、調査費の助成制度を検討すべきであると考えます。
生活者ネットワークでは、過去に「民間建物のアスベスト含有資材分析調査の補助」を要望しており、市においてご検討いただきました。しかし、現状では難しいとの回答をいただきあきらめたことがございましたが、この度の市民からの陳情を重く受け止めております。

以上のような理由から本陳情に賛成であることを申し上げ討論といたします。

 

●マイナ保険証と現行の健康保険証の両立を図るよう国への意見書提出を求める陳情書について、委員会審査では、陳情要旨に示された医療機関の廃業の理由等が不正確だ等を理由に、賛成少数で不採択。
本会議において賛成討論を行いましたが、賛成少数で不採択となりました。

陳情第6-6号 マイナ保険証と現行の健康保険証の両立を図るよう国への意見書提出を求める陳情書について賛成討論いたします。
先ほど、議案第42号 福生市国民健康保険条例の一部を改正する条例についての反対討論で申し上げた通り、生活者ネットワークは、2024年12月2日に廃止が予定されている健康保険証の利用の存続、または延長をした方がよいと考えており、陳情事項の「当面の間、マイナ保険証と現行の健康保険証の両立を図る」とするところと一致しております。

委員会審査においては、福生市のマイナンバーカードの保有枚数率が8月末日では71.1%であることが確認されました。また、マイナンバーカードの国民健康保険の被保険者証登録者割合が7月10日現在 51.8%であることも確認されました。これは国民健康保険の被保険者の登録割合ですが、その他の保険を考慮してもそう多くないことが予想されます。
陳情要旨のなかにある厚生労働省の「オンライン資格確認マイナ保険証の利用実績」については、厚生労働省のホームページで検索しましたが探すことができず、かわりに利用促進に関する項目が多くみられました。2024年5月から8月は厚生労働省が定める利用促進期間だったようで、そのための医療機関や薬局等の取組が紹介され、この4か月間のいずれかの月のマイナ保険証の利用人数の増加に応じて、一時金を支給するという案内など、利用促進に力が入れられ、多額の税金が投入されていることもわかりました。
陳情要旨にある東京都のマイナ保険証の5月の利用率7.25%から、どれくらい利用が上がったのかは確認できませんでしたが、全国保険医団体連合会のホームページを見ると、「マイナ保険証利用率8月は12.2% キャンペーン終了で利用件数の伸び鈍化」との見出しがありました。これは、厚生労働省が公表した数字に基づいているとのことで、全国での利用率がこの程度であれば、東京でもさほど上がっていないことがわかります。

説明不足とこの強引さで、信頼を得られていないために、不安に思っている市民が多くなっているものと考えます。

現行の保険証の期限までは使えるというようなことではなく、国民皆保険のもと、だれ一人取り残されることなく、安心して医療が受けられる医療体制の保障という視点で利用実績等を検証したうえで廃止を検討すべきであり、拙速に健康保険証の廃止をすべきではないと考えます。

以上のことから本陳情に賛成であることを申し上げ討論といたします。

 

●多様な人材の地方議会への参画促進を求める意見書について、委員会での反対はありませんでしたが、地方議員の厚生年金加入についても求めていることから本意見書提出に反対しました。
本会議において反対討論を行いましたが、賛成多数で可決されました。

委員会提出議案第1号 多様な人材の地方議会への参画促進を求める意見書について反対討論いたします。
本意見書については、去る9月5日の議会運営委員会で委員会資料として示されました、全国市議会議長会会長からの「厚生年金への地方議員の加入を求める意見書等の採択について(依頼)」に基づくもので、資料としては他にも「厚生年金への地方議員の加入にかかる基本的な論点について」が示されました。

本意見書の内容をすべて否定するものではありません。
主権者教育の重要性や、会社員が立候補や議会活動等をしやすくするための制度、政治分野における男女共同参画など、生活者ネットワークとしても進めるべきと意見してきたところでもあります。しかし、本意見書には、厚生年金へ地方議会議員が加入できるための法整備を求める内容も含まれていますので、これには反対いたします。

年金制度は国民全体の課題であって、地方議会議員の年金だけを優先して論ずるのではなく、安定的に将来に引き継ぐために、政府によるさらなる改革が求められると考えます。

地方議会議員には、所定労働時間や所定労働日数といった概念はなく、議会の実態もそれぞれ異なっており、また、議員個人の活動はおのおのに任されています。自治体を適用事業者とみなし、地方議会議員を、常用的使用関係にあると認められる厚生年金の被保険者とすることには無理があります。

また、先に述べました委員会資料によりますと、地方議会議員が厚生年金に加入した場合の保険料について、報酬月額40万円では年額60万8,000円を議員と事業主のそれぞれが負担することが示されています。この場合、事業主は自治体ですので、福生市議会の場合は、福生市の一般財源から毎年、年額1,000万円以上が支出されることになります。平成23年に地方議会議員年金制度が廃止されましたが、議員年金受給者に対する年金給付の財源については経過措置規定により、毎年度、現職議員の標準報酬総額に応じて市が負担しています。令和5年度は、決算額29,164,000円となっています。地方議会議員が厚生年金に加入した場合、人口減少で厳しい財政運営の中、新たな財政負担を生み出すことになり、これを認めるわけにはいきません。

以上のような理由から、本意見書には反対であることを申し上げ討論といたします。