令和2年第4回定例会 12月議会報告
12月1日から18日まで、12月議会が開催されました。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、11月後半ごろから市内学校施設等でも感染者が確認され、市の職員が対応に追われる事態となりました。そのため、一般質問は文書による質問とし、時間の短縮を図りました。
一般質問は、行政の方針や計画の進捗状況等を聴き、政策提案したり私たちの考えを主張したりする場です。また、行政が説明責任を果たす場でもあるので、議場で公開で行われなければなりません。今定例会での議会運営について議会運営委員会で検討しましたが、感染者が増えている状況に対応する市に、議会としても協力することになりました。
●一般質問
1、地域課題に対する総合的な支援のための取組について
(1)包括的・重層的な支援体制の整備について
介護や子育てなど相談内容ごとに「たらいまわし」にされるのを防ぐことを目的に、複合的な課題に一元的に対応する断らない相談窓口を市区町村に設置することが可能となる法改正がありました。「8050問題」や「ダブルケア」などの複数の問題を抱える市民への支援が推進されるのではないかと期待しています。福生市でもこうした相談窓口が必要ですが、市の考えについて質問しました。
市は、生活課題の多くは経済的困窮を伴うため、現在は社会福祉課の生活困窮者相談窓口が対応し、関係部署につなげている。断らない相談窓口設置に向けて、関係部署の職員等の意識向上を図り、連携をとり、体制の充実を図りたいと考えているとの回答でした。
(2)ヤングケアラーについて
年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を抱え、本来、おとなが担うような家族の世話や介護等を担い、自らの育ちや教育に影響を及ぼしているヤングケアラーへの支援について質問しました。
市では、福生市要保護児童対策協議会に、ヤングケアラーの状態にある子も含めた要保護児童等についての情報提供による早期発見、早期支援、見守りをお願いしている。子ども家庭支援センターが関係機関からの情報提供により福祉サービスにつなげた事例もあり、引き続き連携強化していく。支援については、12月に行われる国の教育現場を対象に初の全国調査を行う方針で、調査結果をもとに実態把握を考えてまいりたい。ヤングケアラーの状態にある子どもが、子どもの権利が奪われることなく適切な養育を受け、健やかな成長と教育の機会、自由が約束される必要があると考えているとの回答でした。
2、ジェンダー平等について
(1)取組と課題について
コロナ禍の中、女性の人権にかかわる問題が浮き彫りになりました。家事などの負担が大きくなり、あらためてジェンダーバイアスの根深さをみることにもなりました。
多くの非正規雇用の女性が職を失い、DVの相談件数の増加、産後うつが増加したとの報告もあり、7月以降女性の自殺が増えています。子どもの自殺も増え、特に女子高生が増えています。
誰もが今まで以上にジェンダー平等の意識を持つことが重要であることから、市の考えと取り組みについて質問しました。
ジェンダー平等を目指すことは、社会的・文化的な差別意識を解消し、男性も女性も、多様な性を持つ人にとっても、個人の人権が尊重され、誰にとっても暮らしやすい社会をつくっていくことにつながると考えている。これまで、男女共同参画行動計画のもと、情報誌「あなたとわたし」を発行するなど、意識づくりや啓発等に取り組んできた。また、次期計画策定に向けて市民アンケートを実施した。ご意見や社会の変化を踏まえ計画策定を進めたいとの回答でした。
(2)政策・方針決定の場における男女共同参画の推進について
世界経済フォーラムが昨年12月に発表した「ジェンダーギャップ指数」で、日本は大きく順位を下げ153か国中121位でした。国においても、「女性活躍」の目玉として掲げる「指導的地位に占める女性の割合を30%程度」の上昇させる目標年限について、「2020年30%」を「2030年までの可能な限り早期」と修正しました。福生市では、「政策・方針決定の場における男女共同参画の推進」を男女共同参画行動計画に掲げています。この進捗状況について質問しました。
また、他自治体では「女性議会」を設置して女性の意見反映の機会をつくり、意識の向上・啓発などを行っているところもあり、福生市でも必要だと考えます。市の考えについて質問しました。
具体的な内容と進捗状況は、主なものとしては「審議会等への女性の登用」では、国の目標を達成している。また、「女性職員の積極的登用」では、昨年度より緩やかに上昇している。おおむね順調に推進が図られている。「男女平等参画条例の創設検討」については引き続き検討課題としてとらえているとの回答でした。
「女性議会」については、現時点で設置の考えはない。市民会議や市民団体との会議など、市民と接する様々な機会において女性の意見反映の充実を図っていきたいとの回答で、その具体的な対応については示されませんでした。
3、教育センターの充実について
これまでの一般質問の中で、教育センター機能の充実・改善、また、相談体制の整備・充実を進めるとの答弁があったことから、教育センターの現状と今後の取り組みについて質問しました。
教職員研究・研修所、学校適応支援室(そよかぜ教室)教育相談所の3つの機能で小中学校の教育を支え、学校ではできない専門性を有し、その点で成果を上げている一方で、十分に対応できていない面もあり改善に取り組んでいる。教育相談室では、学校との連携についての課題がいくつか報告されている。学校適応支援室(そよかぜ教室)と教育相談所との連携も十分ではない部分もある。子どもへの切れ目ない支援のため、教育センターと子育て世代包括支援センターとの話し合いを行っている。また、教育支援委員会の精度を高めていきたいとの回答でした。今後は、成果と課題を洗い出し、改善に向け人材育成を行なっていきたいと考えているとの回答でした。
●補正予算
新型コロナウイルス感染症拡大のために中止となった事業の減額補正、また、指定管理者に支払われる管理者休業等補償金等の補正予算が可決されました。議会でも、行政視察に係る職員旅費を削減し、減額補正しました。
ひとり親世帯臨時特別給付金が再支給されることに伴う補正予算や生活困窮者自立支援の住宅確保給付金の支給期間の延長が決定したことに伴う補正予算等が審査され、可決されました。
●陳情について
9月議会に、「国会における憲法論議の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書提出に関する陳情書」が市民から提出され、総務文教委員会で審査されましたが、継続審査となっていました。本陳情では、憲法は国家の基本法として国民の安全を確保し、首都直下型地震などの大規模災害等への対応、新型コロナウイルスなどの感染症対策などの諸課題に対処しうる内容であることが求められているとし、憲法審査会の実質的審査の推進と国民的な議論の喚起と周知を求める意見書を、福生市議会から国に提出するよう求める陳情内容です。12月議会でも審査し、委員会では賛成多数で採択、本会議での採決でも賛成多数で採択されました。
憲法について、広く議論していくことはとても大切なことですが、国にその議論の喚起と周知を議会が求めることには違和感があり、議論の場は国民の側からつくっていくものだと考え、本陳情には反対し、本会議で討論しました。
討論全文を、以下に掲載します。
陳情第2-4号 国会における憲法論議の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書提出に関する陳情書について、反対の立場から討論いたします。
本陳情書では、現憲法は約70年間一度も改正が行われておらず、様々な諸課題に的確に対応し得る内容であることが求められると訴えています。日本国憲法は「小さな憲法」といわれ、英語に置き換えたときの単語数は、欧米諸国に比べ非常に少なくなっています。これは、憲法で規定する事柄が非常に少ないこと、規律密度が低いを意味しています。憲法改正の回数が多い国は、細かな事柄を規定しているためだと考えられています。日本国憲法は、大枠を定めるものであるため、陳情書で示されているような事柄については、憲法の範囲内でそれぞれに合う法律を定め対応しています。新型コロナウイルス感染症についても、新型インフルエンザ等対策特別措置法を適用対象とする改正が行われ、国において対応しています。しかしながら、憲法の規律密度が低いために、これまでの国と国民が共有してきた、集団的自衛権を認めないという事柄についてなどは、解釈が変えられるというような事態にもなったわけです。
憲法第99条では、天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負うと謳われています。陳情趣旨にあるように、主権者である国民が幅広く議論し、その結果が反映されるべきとの主張には賛同するところではありますが、憲法尊重擁護義務を負っている政府や国会に対して、地方議会が国民的議論の喚起と周知を求めることには違和感を覚えます。そして、憲法第12条の前段には、この憲法が保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によってこれを保持しなければならないと謳われ、主権者である国民は、憲法を守らせるよう不断の努力をしなければならないことを考えれば、政府や国会が国民に対して議論を喚起することにも違和感を覚えます。
生活者ネットワークでは、これまでにも国民投票法や憲法についての学習会を開催し、通信やホームページ等で情報発信してきました。福生・生活者ネットワークとして憲法学習会を開催したときにも、会場の定員いっぱいになるほどの方々にご参加をいただき、関心の高さがうかがえました。
憲法については、考え方や立場を超えて幅広く議論していくことが重要であると考えておりますが、政府や国会に喚起や周知を求めるのではなく、主権者である国民が議論の場をつくっていくことが重要であり、そうすることで一人ひとりの自由と尊厳を守り、民主主義を守ることにつながると考えます。
以上のような理由により、本陳情には反対であることを申し上げまして討論を終わります。