0歳から始まるオランダの性教育

オランダ在住の教育研究家で「0歳から始まるオランダの性教育」の著者であるリヒテルズ直子さんの講演会に参加しました。(11月9日武蔵野スイングスカイルームにて)
日常的に子どもと関わりを持つ仕事をされている方や小さなお子さんとの親子連れ、思春期と思われるお子さんとの親子連れなど多くの参加者で会場はいっぱいでした。

先ず、「性について口に出すのは下品なことでしょうか?」という問いから始まりました。
当たり前のことを下品にあつかてはいないか・・・
「人を好きになることは悪いことでしょうか?」
その気持ちを持つことをおとなが否定することはできないのではないか・・・
「性の知識は放っておいても自然に身に付くでしょうか?」
自然に身に着く前に、人との関係性や基礎知識が必要で、その先に自然に身についてくるものであるとリヒテルズさんはおっしゃいました。

オランダの性教育は市民としての行動の仕方・人権の尊重を目的としています。
日本での性教育も「人権教育」として行われています。一般質問で取り上げた際には、「同性や異性との人間関係や今後の生活において直面する性に関する諸課題に対して、適切な意思決定や行動選択ができるよう、その基本的な資質や能力を養う性教育を充実していくことが重要です。」と答えていただいています。
オランダの性教育と日本の性教育は、どちらも自他の尊重を重視しています。しかし、オランダでは、どうしたら相手を傷つけないのか、相手を尊重するとはどういうことなのか、自分の意思を表現すること〈NOと言うことの大切さ〉というところまで学びます。
避妊することや性感染症についても正しく学び、そのうえで性の多様性や一人ひとりの違いをグループワークやゲームで学び、子どもの自尊感情を大切にしながらプライバシーを守ることの大切さとお互いを尊重し合うことを学びます。家庭だけではバラつきのある知識を学校で教えるだけでなく、ともに考え学びます。

このオランダの性教育は、ユネスコが世界保健機構などとともに作成した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づいて行われていて、0歳から年齢に応じた学習ラインが示されています。
日本でも、このガイダンスを取り入れた性教育の必要性を強く感じます。

今年8月には東京都教育委員会による公立中学校長対象に、性教育に関するアンケート調査が行われました。来年度に向けて、教育指導要領の見直しも検討されていると聞きます。実態に合った見直しがされることを期待します。

厚生労働省の人口動態統計によると、10代の母が出産した数は、2014年は1万3011件、2015年は1万1929件、2016年が1万1095件と減ってはきているものの毎年1万件を超えています。2016年度の人工妊娠中絶件数は16万8015件で前年度よりも4,7%減少していますが、20歳未満では19歳が6,111件と最も多く、次いで18歳が3,747件となっています。年齢階級別にみると20~24歳が最も多く38,561件でした。
また、児童ポルノの検挙数が最多だった昨年を上回っているとの報道もあります。
自他の尊重を重視した性教育と実質的な性教育の必要性を強く感じます。

 

講演の中の「お互いの気持ちを聴き、尊重し、合意するということを学ぶ・・・性教育は市民性教育だ」とのリヒテルズさんの言葉に共感しました。