福生市議会 平成29年第1回定例会 3月議会報告

2月28日から3月28日まで、平成29年第一回定例会が開かれました。
本会議、常任委員会と横田基地対策特別委員会、議会改革特別委員会のほか、平成29年度予算審査特別委員会が開かれ、予算審査を行いました。
本会議最終日には委員会提出議案が2件、議員提出議案1件が提出され、審議されました。

 

●一般質問

1、子どもの貧困対策の推進について

平成26年の政府の発表では、子どもの相対的貧困率は16.3%、ひとり親家庭では50%を超えています。平成25年「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立・施行され、自治体は対策を講じることになっています。子どもの貧困は、その子自身ではどうすることもできず、発達や健康、学力、心にも影響を与えることから、対策が急がれています。
市は、このことに特化した方針や指針は策定していないが、児童扶養手当や保護者の就労に関する支援など、今行っている施策が支援につながっていると回答。ひとり親家庭については、家計や就労、健康など、家庭によって抱える様々な悩みに、個々のケースに合わせたきめ細やかな対応が必要だと考えている。児童扶養手当の現況届提出の際に、悩みや困りごとを聞き取り、内容によって必要な支援につなげている。ヘルパー事業でも、保護者の不安を軽減するため、子どもの情報をヘルパーに伝えるための利用者連絡票を導入する予定と回答。
現在進められている支援の届かない子どもがいる現実を踏まえ、子どもの生活実態調査実施を要望。また、生活困窮に至る直前がきびしい生活を強いられることが多いことを考え、児童手当の現況届提出時にも、困りごとを相談できるような取り組みを要望しました。
この問題は、子どもに関することという括りではもちろんのこと、心の問題、健康や生活習慣の問題、学力の問題、日本語支援の問題、義務教育終了後に係る教育費の問題、保護者の就労や生活と健康の問題など多岐にわたっています。子どもの権利の視点も考えていかなければならないと考えます。この複雑な問題に対応するため、横断的な部署の設置を要望しました。

 

2、いじめ防止対策の取り組みは

「いじめを生まない、許さない学校づくり」「児童生徒をいじめから守り通し、児童生徒のいじめ解決に向けた行動を促す」「教員の指導力の向上と組織的な対応」「保護者、地域、関係機関と連携した取り組み」の4点が基本的な考えです。
いじめを把握した場合には、個々の教員の単発の指導ではなく、複数の教員が継続的に観察。スクールカウンセラーや保護者とも連携して対応しています。また、日頃から未然防止の観点を重視しています。具体的には、アンケート調査を年3回、計画通りに実施し、いじめの実態把握と早期発見・早期対応に努めています。児童・生徒に配慮して、記入や提出の方法を工夫したり、問題が発生した場合等に活用できるように、三年間保管しています。
教員の指導力の向上と組織的な取り組みを充実させ、児童・生徒と保護者との信頼関係を築き対応してほしいと要望しました。

 

●予算審査特別委員会 3/14~17

平成29年度は、改修工事が終了するもくせい会館のオープンや、新設される防災食育センターの稼働開始など、大規模な支出が予定されています。
また、9月からは、福生ネットでも要望してきた中学校給食の開始、アレルギー対応給食の導入や、子どもの学習支援、育児ギフトの贈呈、ふっさっ子グローバルビレッジ事業の開始、証明書等のコンビニ交付等、新しい事業が多く計画されています。
市の課題でもある多文化共生を進めるための取り組みとして、平成28年第4回定例会で提案した「やさしい日本語」の活用の検討や、「一人ひとりを大切にした教育」としての不登校対策や特別支援教育等の充実を図るとしています。
多様性を認め合い、人権を大事にするまちづくりにつながる取り組みにも期待し、予算全体を賛成としました。

 

●委員会提案による条例の特例案を可決

「福生市議会議員の議員報酬等の特例に関する条例」案を全会一致で可決。
議員が病気等で長期間議会活動をすることができない場合、議員報酬と期末手当を減額することを定めました。

 

●委員会提案による意見書の提出を決定

現在、心身障害者医療費助成制度の対象は、身体障害者手帳1級・2級の身体障害者、療育手帳(愛の手帳)1度・2度の知的障害者の方々の身となっていて、精神障害者は対象外となっています。
このことから、市民から東京都に対して「精神障害者も助成制度の対象とするよう求める意見書の提出してほしい」との陳情書が、福生市議会に提出されました。
市民厚生委員会でこの陳情書が採択され、本会議で全会一致で意見書の提出が可決されました。

 

●議員提案による条例を可決

「福生市地酒で乾杯を推進する条例」案を可決。
市の歴史と伝統に育まれた伝統産品である「地酒」で乾杯する習慣を広めることで、人と人との交流や地域経済の振興、地域の伝統と理解の促進を図ろうとするもの。条文は「努めるものとする」という緩やかな縛りだが、第4条では「市民は、市及び事業者が行う地酒による乾杯並びにその普及促進の取り組みに協力するよう努めるものとする。」と謳われています。
乾杯に特化せず、まちづくりの中のひとつの位置づけとしての「地酒」であるほうが、子どもやお酒を飲まない人にも広がりが期待できるとして、本会議で反対討論しましたが、賛成多数で可決されました。

(討論全文)

議員提出議案 第1号

福生市地酒で乾杯を推進する条例(案)について、反対の立場から討論させていただきます。

 

条例とは、地方自治体が、その地域課題を解決するために制定する法律に準ずるもので、大変重い意味を持つものであると認識しております。また、条例を制定することは、議員提案によるもののほか、住民が一定の署名を集めて直接請求することもでき、地域課題を住民と共に考え解決につなげていくための、重要なルール作りでもあると考えております。条例を制定することは福生市民と福生の行政区の中にいる人すべてに影響するルールとなるものです。私は、この「地酒で乾杯を推進する」というルールは必要ではないと考えます。

2015年3月25日に毎日新聞に掲載された「自治はどこへ【政策条例】「乾杯条例コピー拡散議会100超、対象変え条文拝借」という記事によりますと、いち早くこの条例を制定した京都市では、約10年間、酒造関係者たちが市内に在る旅館などに地酒を無償で提供し、乾杯してもらうよう努力しましたが、売り上げが伸びるなどの効果がなかなか表れず、条例化に至ったと記されています。

地酒の消費量を伸ばす必要があるならば、先ずは、事業者の企業努力が大切であり、協力して地酒のPRを行う等の努力が必要だと考えます。市内にある大型スーパーで清酒売り場を見ますと、陳列棚に並んだ二つの蔵元の地酒の数や売り場面積に大きな差があります。この、建物の所有者を考えますとあたりまえのことかもしれません。しかし、双方が協力してPRに努め、地酒で乾杯を推進し、市民の中にそのような機運が高まってきて初めて市民のルールである条例づくりを行っていくべきではないでしょうか。

そして、京都市での条例制定をきっかけに、乾杯条例やそれに類似する条例が、現在100以上の自治体で制定されているそうです。それらの条例に対しては、安易な条例を制定しているとした批判もあり、同じような条例案を不採択とした議会もあります。

さて、提案理由の中でご説明の通り、日本酒は古くからお祝いごとや儀式に使われてきました。そして、現在でも四季折々の節句や行事、冠婚葬祭など様々な場面で使われています。日本酒離れと言われていますが、日本文化として間違いなく根付いており、日本の食文化には欠かせないものとなっています。

また、お酒をいただく場面には、料理が欠かせませんが、日本酒をいただこうとするときには、もちろんその日本酒に合った料理をいただくことが日本の食文化の基本でもあります。その時々で食事に合った飲物を選択することは個人の自由です。この自由については憲法第13条に規定があり、そこには「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という幸福追求権が謳われています。この条例案は、これに反する恐れがあると考えます。

 

この条例案第5条では、「市、事業者及び市民は、この条例の施行にあたっては、個人の嗜好及び意思を尊重するものとする。」として(個人の嗜好等の尊重)を掲げています。しかしながら、私がこの条例案に反対の意思を示しましたところ、「地酒で乾杯しないのか」「日本酒を飲まないのか」とおっしゃった議員がいました。条例を作る側の議員のでさえ、このような認識です。第5条を掲げても、その意味合いがどれだけのものかうかがい知ることができます。個人の嗜好、ひいては個性であったり、多様性を否定することにもつながりかねません。安易な条例制定により市民の自由が規制されるばかりでなく、罰則はありませんが、市民の不作為による条例違反を生むことにつながるわけです。

私は、若い世代の他市から引っ越してこられた方には、次のようなことを言われたことがあります。「福生は、大きな蔵元が二つあって、上の方の一部の人たちだけでいろんなことが決まって進んでいく。自分たちは、まちづくりに参画できないのか。」このようなご意見をいただいたのは、一度だけではありません。乾杯だけを取り上げるのではなく、まちづくりの中の位置づけとしての地酒という方が、お酒を飲まない方や子どもたちにまでも広げることができ、目的に掲げるような人と人との交流が促進されると考えます。例えば冬のイベントに甘酒、小学生の考案した酒粕豚汁、美肌効果で女性に人気の麹の甘酒、商工会と連携して地酒を使った料理やお菓子など、広がりが期待できるものと考えます。また、地酒の生産には欠かせない水環境の保全や、美しい蔵のある景観を守る取り組みなど、まちづくりの広がりが期待できるよう、先ずは超党派で協議会等を立ち上げ条例づくりを行っていくのが良いと考えます。

最後に私は、条例がなくても、その時、その場面に合う場合は「地酒で乾杯」をしたいと思っておりますことを申し添えておきます。

以上のような理由で、この条例案に反対であることを申し上げまして、私の討論を終わらせていただきます。