福生市立学校在り方検討委員会を傍聴しました
福生市立学校在り方委員会が、今年5月から9月までの間に全6回が開催されました。
この委員会は、令和4年度から令和6年度まで設置されていた「令和における福生市立学校の在り方検討委員会」での議論を踏まえ、児童・生徒数の減少を見据え、望むべき教育の実現と課題の解決という観点から、老朽化の進む福生市立学校の改築、再配置、公共施設との複合化等の在り方について、今後100年を見据えた学校の環境づくりと在り方を検討するために設置されました。
委員は、学識経験者 2名、市立中学校長1名、市立小学校長1名、市立学校PTA連合会長、福生市町会長協議会長、福生市立学校運営協議会委員 4名、教育部参事、企画財政部参事の12名で構成され、毎回熱い議論が展開されました。
委員会での議論は種別ごとにまとめられ、提言として段階を経て公表されます。
第1回目には、委員の一人である神奈川大学人間科学部の大竹弘和教授の基調講演がありました。
『コミュニティ拠点の学校とは!~大きな負担や責任を「学校現場」から「地域や民間」に移す作業を行い、学校施設を地域の共有資源として有効活用すれば解決できることは山ほどある~』と題した講演では、
・学校としてのセキュリティを強化しつつも、善良な市民が共用できる複合施設を活用することで、地域の顔の見えるつながりと子どもの見守りができ、子どもの安全対策となること。
・子どもの三間問題の解決→多忙で時間がない【時間】/遊ぶ場がない【空間】/学校以外で遊ぶ友達がいない【人間】
・家族、地域、職場、以外の新たなコミュニティとして、同じ趣味や目的、考えを共有できる相互学習の場となる施設。(子どももおとなも)
・学校という「ハコモノ」の価値や魅力は、言わば「地域交流型デパートメント」。
・学びの社会が日本を救う。リカレント教育の場。
などなど、地域総がかりの教育と生涯学習、地域コミュニティの場となる学校と公共施設の複合化の可能性についてうかがうことができました。
その後、6回目までの委員会では、4つの種別ごとに全23の視点が示され、事務局の担当職員から説明の後に議論され、提言としてまとめられました。
種別と視点は以下の通りです。
【1】市立学校の現状
①基準への適合状況
②児童・生徒の推計
③施設の老朽化等の現状
【2】これからの学校の在り方
④適正規模の考え方
⑤適正規模を維持できる学校数
⑥適正配置の考え方
⑦学校再配置・統合の視点(1)
⑧学校再配置・統合の視点(2)
⑨劣化状況を踏まえたスケジュール
【3】これからの教育の在り方
⑩ことばの力を育成する学校
⑪使える英語を身に付ける学校
⑫読書力を育成する学校
⑬情報活用能力を育成する学校
⑭郷土への愛着を育む学校
⑮幼保小中高一貫・連携する学校
⑯地域社会総がかりの学校
⑰個のニーズに応じる学校
⑱地・徳・体をバランスよく育む学校
【4】実現に向けた調整事項
⑲防災拠点としての学校施設
⑳環境への配慮
㉑複合化・集約化(1)
㉒複合化・集約化(2)
㉓学校再編基本構想・基本計画
委員からは、各視点でさまざまなご意見がありました。
どの学校を無くすかという議論ではなく、新たにどのような規模でどこにつくるか。
学びの充実。クラスにとらわれない自由に動けるスペース。
地域コミュニティの拠点とする考えは、市民の理解が得やすい。
共同利用と児童・生徒の安全対策。
共同利用型学校PFI。
学校の真ん中にラーニングコモンズ。
義務教育だけじゃない、生涯学習としての学校の在り方を考える。
学習の習慣化は地域が支援する。
学校図書館を地域の学びの場に。
個別的な学びのための閉鎖されたスペースと協働的な学びのための広いスペースの両方が必要。
心を落ち着かせるためのスペースを教室につくる。
老朽化や人口減少に対応するだけじゃない。子ども、高齢者、ハンディキャップのある人が、縦割り行政のそれぞれの施設ではなく、新たな地域コミュニティの場となる複合化とする考え方が必要、との言葉に共感しました。
ここでは紹介しきれない多くのご意見がありましたが、「子どもが主役」「福生市の教育はどうあるべきか」という視点が、常に議論の核にありました。
会議録も公表されますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
「学校の在り方」という大きな枠での議論でしたが、学びの場であるとともに生活の場の一部でもあること考えると、トイレや更衣室、食育室(ランチルーム)、校庭、学校園(畑や花壇)、ビオトープ、あそび場(遊具の設置)などについて気にかかりました。
また、12名の委員のうち女性は1名、事務局にも女性は1名だけだったのが気にかかりました。
私たち昭和世代の学校は、全員が前を向いて、板書をノートに移し、繰り返し覚える学びだったように思いますが、今は違います。そして、これからはもっと変わっていくのでしょう。
教育を受ける権利はもちろんのこと、全ての「子どもの権利」が保障される「学校の在り方」となるよう期待しています。
今後、提言の公表と学校再編基本構想・基本計画の策定にも注目していきます。