議会運営委員会視察 議会基本条例・議員政治倫理条例について
福生市議会では、これまでにも議会改革について議論を重ねてきました。
今期は、議員定数の見直しや議場の放送設備の更新が来年度に控えており、積極的な議論が議会運営委員会において進められています。
現在は、議会基本条例と議員政治倫理条例の制定に向けて議論が進んでおり、先進的に取り組んでいる2つ議会を視察させていただきました。
(委員ではありませんが、委員外議員としてで参加しています。)
●10月29日(火)栃木県那須塩原市
(1)議会基本条例制定の背景・経緯について
真の地方自治の実現に向けて、姿勢と緊張ある関係を保ち、独立・対等な立場で市行政の政策決定や事務執行を監視・評価し、政策立案や政策提言を行うとともに、議員は自らを律し市民参加を拡大し、市民のための政策実現するために、市議会の最高規範である議会基本条例を制定した。
議会活性化検討特別委員会を設置、平成22年度から2年間かけて協議、平成24年3月に制定。
(2)議会基本条例の運用及び検証について
条例制定から5年経過し、条例に照らし条文に係る取組の振り返り・評価(段階評価)と条文の検証と改正等の必要性評価(管理評価)を行った。検証準備のための進捗チェックシート・自己評価シートを用い検証準備し、会派毎の評価シート、会派間調整シート、改正検証チェックシート、PDCAサイクルシートを用いて検証を行う。さらに、第三者(早稲田大学マニフェスト研究所による評価等を受け、今後の取組検討等を行う。
(3)議員政治倫理条例制定の背景と経緯について
平成24年度から議会活性化検討特別委員会で検討等を始め、平成27年3月議会で制定。
住民の信頼を得る公正で開かれた議会の実現を目指し、政治倫理基準と請負規制、資産公開制度、問責制度の3つを柱とし、政治倫理審査会の設置と住民の調査請求権を保障する。
(4)議会取組実行計画について
条例に基づき、那須塩原市議会取組実行計画を策定し、議会力向上サイクルと政策形成サイクルの目標値を定め、評価や見える化等を行っている。また、市民へのアンケートも行っている。
(5)議会報告会及び意見交換会について
平成24年8月の第1回からこれまでに20回の報告会を行った。4班体制でスタートしたが、定数削減に伴い3判で実施。学校形式やワークショップ形式等で行っていたが、平成30年からは、ワールドカフェ方式やフォーラム形式を導入。コロナ禍をきっかけに、YouTube配信やzoom配信を行っている。参加された市民からの評価はおおむね高いが、参加者減少への対応が課題である。
●10月30日(水) 福島県会津若松市
(1)議会基本条例制定の背景と経緯について
2000年に施行された地方分権一括法により、地方分権と議会、住民自治充実に向けた制度を考えた議会基本条例を制定した。議会では、地方分権に備えた制度や議会運営について、方向性は一致していたが、前文に記すことでそれが明確になった。
(2)議員政治倫理条例制定の背景と経緯について
市町村合併後のセクハラ問題から特別委員会が設置された。条例では、職務関連犯罪による逮捕後の説明や起訴後の説明、有罪判決後の説明を規定。有罪確定後の措置についても規定された。また、議員報酬等の特例に関する条例で、報酬の支給停止についても規定された。
(3)市民との意見交換会について
地域民主主義実現のため、主権者である市民の声を聴き、意見交換する場として設けた。地区別意見交換会と分野別意見交換会を実施。意見交換会で出された事業を政策(委員会の所管事務調査)に置き換え、住民福祉の向上につなげる。
(4)広報公聴委員会の役目について
市民意見を政策課題ごとに整理し(意見・提言・要望事項・質問等)、市政の課題設定を行い、政策討論会に報告、様々な手法で調査研究を行い、政策をまとめる。
(5)政策サイクルに基づく議会活動について
執行機関の追認機関から脱却し、住民福祉の向上を目指す「議会からの政策サイクル」をつくり上げている。9月の決算でチェックし、11月地区別意見交換会を経て、3月予算へ市民意見を反映させる政策提案につなげている。また、市民との意見交換会は、予算決算委員会の所管事務調査として実施している。
(6)議会評価特別委員会について
令和5年10月に当委員会を設置。各常任委員会等から委員を1名ずつ選出し、議会評価モデルについて検討を行っている。
所感
那須塩原市議会では、PDCAサイクルを意識した政策提案とチェックシートを活用した評価が行われていた。会派毎の評価シートを使い評価し、議会運営委員会で議論を深め、会派間の調整シートを使い、その評価の納得度を上げているとのことであった。会派それぞれに考え方があり、評価のポイントも異なることが想像されるが、議論し調整していくことで、議会としての評価が市民に明確に伝わるのではないか。また、その評価に至った経緯についても、シートを使うことで、議員全員が市民へわかりやすく説明できるのではないかと考える。さらには、第三者による外部評価として、早稲田大学マニフェスト研究所による取組・手法の評価を得て、後の取組及び検証をまとめていくとのことであった。第三者評価を行うことで、客観的な評価も得ている。
議会報告会については、各常任委員会での取組を重視しているとのことであった。市政の課題等は幅広くあるため、常任委員会での取組をテーマとすると市民にもわかりやすくなるのではないか。また、議会報告よりは、意見を聴く方に力を入れているとのことであったが、その必要性については、自分の日頃の活動からも感じているところである。
倫理条例については、議員によって温度差があり、資産公開には抵抗感を持つ議員もいる。温度の差はあるが、全員が理解していることが大事であるとのことであった。福生市議会では、どのような内容にしていくのか、十分な議論が必要であると感じた。
会津若松市議会では、周辺町村との2度にわたる合併から、議員数が最大で61人にもなった。議員定数の見直しと、合併後の議員間の意識の違い等が明るみとなり、また、セクシュアルハラスメント等の問題もあったことから議員政治倫理条例の取組に着手するが、議員のみで検討することが難しく、条例制定は次期議会へと見送りとなった。改選後は、制定に向けた体制として議会制度検討委員会を任意の委員会として設置、公募市民1名と学識経験者として福島大学の松野氏を外部委員とした。外部委員が入ることで、議員間の議論が活発化したとのことであった。市民が議論に参加することの有効性を感じた。また、議会基本条例と議員政治倫理条例を同時に制定しているが、そこを目指しての取組は、議員間の協力と、十分な議論が必要であったようだ。思いの強弱はあっても、同じ方向を向いて議論することの大切さを感じた。
市民との意見交換会から得た意見を政策にした政策提案の具体例や議員4年間の政策サイクルなど、大変興味深く学ぶことができた。市の総合計画や個別計画でこぼれている点を政策にしているとのことで、その視点はとても大切であると感じた。
両市議会とも、条例を制定した後の運用や検証について、まだまだ進化していくものと思われる。そうなっていくための、地方自治や住民自治に対する思いや議員同士の議論、議会としての意思を市民に示すことなど大変学ぶところの多い視察であった。
先ずは、制定に向けての具体的な動きについて、福生市議会でも議論していかなくてはならない。議会改革を進め、市民にひらかれた議会にするため、条例制定に向けた議論を深めていきたい。